寒い日やひと息つきたい時間に、ミルクティーがいつもよりおいしく感じられる瞬間はありませんか。味の決め手は茶葉選びと抽出の設計にありますが、専門用語が多くて少しハードルを感じることもあります。
本記事では、香り・コク・渋みの3軸で茶葉を整理し、家庭でも再現しやすい比率と時間の目安をやさしくまとめます。
濃厚にしたい日も、軽やかに仕上げたい日も、理屈が分かると迷いが減って満足度がぐっと高まります。
ミルクティーに合う茶葉の考え方を基礎から整える
まずは方向性を決める導入です。ミルクティーでは、ミルクの甘みと脂肪分が紅茶の苦渋と香りを包みます。
そこで大切なのがコクを担うボディ、切れ味を生む渋み、そして立ち上がる香りの三者バランスです。ここを押さえると、産地や等級の違いも「どの役割を担うか」で理解しやすくなります。
コクはアッサム系と粒状リーフで出しやすい
牛乳に負けない厚みをつくるには、穀物のような甘い香りと重心の低い味を持つアッサム系が頼もしいです。特に粒状に成形したCTCは短時間で濃度が上がり、ミルクを加えても輪郭が崩れにくいのが強みです。濃いめに仕立てたい朝やチャイにも向きます。
香りの骨格はウバやキームンで補強する
ミルクを入れると香りは穏やかになります。そこでメントール様の涼感と高い香気をもつウバ、もしくは蘭を思わせる柔らかな香りのキームンを少量ブレンドすると立ち上がりが生まれます。香り先行で軽やかに仕上げたい人に向きます。
砂糖とミルク量は茶葉の濃度設計とセットで考える
甘みは渋みを丸め、ミルクは濃度を薄めます。砂糖を入れる前提なら抽出はやや長め、無糖で飲むなら渋みを出しすぎない時間設定が安心です。
ミルク多めにする日は茶葉量を5〜10%増やすと輪郭が保てます。
抽出温度と時間の目安で「再現性」を上げる
基本は熱湯で抽出して香味成分を引き出します。急冷や低温は香りが閉じやすいので、まずは沸騰直後を基準にしましょう。
ロイヤルミルクティーは水と牛乳を使うため、リーフの量を平時より増やすのがコツです。
リーフ形状と等級で味の立ち上がりが変わる
葉が細かいBOP/BOPFやCTCは短時間で濃くなります。反対にOPなどの大きめリーフは香りがゆっくり開くため、時間と温度を丁寧に当てるとまろやかに仕上がります。等級は品質の上下ではなく「形状の分類」と覚えておくと選びやすいです。
手順ステップ(H:ロイヤルミルクティーの基本)
- 鍋に水100mlを沸かし、茶葉3〜4gを入れて弱火で2〜3分保つ
- 牛乳200mlを加え、沸騰直前まで温めて1〜2分
- 火を止めて30秒待ち、茶こしで静かに濾す
チェックリスト(J:味の微調整)
- 渋みが強い→牛乳を20〜30ml追加し30秒温め直す
- 薄い→茶葉+0.5gで再抽出または保温1分延長
- 香りが弱い→ウバ/キームンを10〜20%ブレンド
ミニFAQ(E:よくある疑問)
Q. 紅茶は洗うべき?
A. 洗いは香りを落とすため不要です。沸騰直後の熱湯で淹れれば雑味は出にくいです。
Q. ティーバッグでもよい?
A. 細かい葉が多く濃度は作りやすいです。鍋抽出なら1袋あたり120〜150mlを目安にします。
タイプ別のおすすめ茶葉を味の軸で選ぶ
味の好みがはっきりしていれば、産地は自然と絞られます。ここでは「濃厚」「香り重視」「すっきり」の3タイプで候補を整理し、日常の一杯に落とし込みやすい指針を示します。
濃厚で甘やか:アッサム(CTC/BOP)とケニア
焼き菓子や朝食に合うしっかり系。モルティな甘みのアッサムはCTCで短時間でも密度が出ます。
ケニアは明るい色合いと骨太なボディで、砂糖や蜂蜜とも好相性です。
牛乳多めの日の主役に向きます。
香りで魅せる:ウバ少量ブレンド/キームン単独
ミルクを入れても香りを感じたい人は、ウバを10〜20%足して清涼感を付与すると輪郭が立ちます。フローラルなキームンは渋みが穏やかで、無糖のままでも香りがよく伸びます。
軽やかで飲み続けやすい:ディンブラ/ニルギリ
毎日の定番にしやすい中庸タイプ。ディンブラはくせが少なく、ミルクでもストレートでもバランスよく飲めます。
ニルギリは爽やかで、食事と合わせても重くなりにくいのが利点です。
比較ブロック(I:タイプ別の向き不向き)
| 濃厚にしたい | アッサムCTC/ケニア |
| 香りを立てたい | ウバ少量/キームン |
| 軽やかで毎日 | ディンブラ/ニルギリ |
ミニ用語集(L:サッと確認)
- CTC:潰す・裂く・丸める製法。短時間で濃度が上がる
- BOP:細かい刻み葉。渋みとコクが出やすい
- オーソドックス:葉の形を残す製法。香りがゆっくり開く
注意ボックス(D:ブレンドのコツ)
香り系を足すときは10〜20%から。入れすぎると主役のボディが軽くなります。最初は少量で差を確かめ、グラスに注いでから香りの立ち方を確認しましょう。
産地と等級で見る具体的な選び方
店頭や通販で迷わないために、産地と等級をセットで見ていきます。品質の上下ではなく「味の立ち上がり方の違い」と捉えると、表示を読み解きやすくなります。
早見表(A:産地×味わい×相性)
| アッサム(CTC/BOP) | 濃厚・甘香 | ミルク多め◎ |
| ウバ(BOP) | 涼感・キレ | 香り補強◎ |
| ディンブラ(BOP/OP) | 中庸・バランス | 毎日◯ |
| ケニア(CTC) | 力強いボディ | 砂糖◯ |
| キームン(細葉) | フローラル | 無糖◯ |
よくある失敗と回避策(K)
薄いのに渋い:抽出が長すぎます。リーフを増やし時間は短めに。
香りが立たない:温度が低い可能性。沸騰直後の湯で抽出し、香り系を少量ブレンド。
ミルク臭さ:沸騰させると匂いが立ちます。沸騰直前で止めるのが安心です。
ケース引用(F:実感ベース)
来客用はアッサムCTCを主体に、香りが弱いときだけウバをひとつまみ。砂糖なしでも満足感が出て、焼き菓子との相性が安定しました。
目的別レシピ設計で「今日の一杯」を最短にする
同じ茶葉でも、配合と時間で驚くほど表情が変わります。ここでは目的に応じた比率と操作を「基準→微調整」の順で示し、再現性を高めます。
ベンチマーク早見(M:比率と時間)
- 濃厚系:茶葉4g/水
100ml/牛乳200ml・抽出3+2分
- 中庸系:茶葉3g/水120ml/牛乳180ml・抽出2+1分
- 軽やか系:茶葉2.5g/水150ml/牛乳150ml・抽出2+1分
手順(H:鍋orポットでの進め方)
- リーフを計量し、器具とカップを温める
- 湯で香味を引き出し、牛乳を加えて沸騰直前で止める
- 最後の一滴まで注ぎ切り、必要に応じて砂糖で整える
ミニ統計(G:コストと濃度の関係)
- 1杯あたり茶葉3g=約30〜45円(100g/1,000〜1,500円想定)
- CTCは同量でも濃度が上がりやすくコスト効率がよい
- 香り補強のブレンドは総量の10〜20%で十分に効果
買い方・保存・常備ローテの整え方
日常で続けるなら、味の軸がぶれない買い方と、香りを守る保管が大切です。計画的に回せば在庫も鮮度も保ちやすくなります。
無序リスト(C:常備の基本)
- 主役:アッサムCTCなどボディ担当を100g
- 香り:ウバ/キームンを50gずつ
- 軽やか:ディンブラまたはニルギリを100g
チェックリスト(J:保存と運用)
- 遮光・低湿で密閉。開封後は2〜3か月を目安
- 小分けにして空気接触を減らす。缶や袋はしっかり閉める
- 季節で比率を調整。夏は軽やか、冬は濃厚を増やす
注意ボックス(D:買い足しの勘どころ)
迷ったらまず小容量で試す。CTCと香り系を少量ずつ買い、基準比率で淹れてから増量すると失敗が減ります。定番が決まれば大袋でコストを抑えましょう。
シーン別ベスト3を素早く選ぶ
「今日は何にしよう」を短時間で決めるための、場面別の推し組み合わせです。手元の在庫で置き換えても方向性はそのまま活かせます。
有序リスト(B:朝食・午後・デザート)
- 朝食:アッサムCTC単独。牛乳やや多めでパンに合う
- 午後:ディンブラ主体+ウバを10%。香りとキレを両立
- デザート:キームン単独。無糖でも香りが長く楽しめる
比較ブロック(I:甘さ調整の目安)
| 無糖で飲む | キームン/ディンブラ。抽出は短め |
| 砂糖あり | アッサム/ケニア。抽出は長めで密度を確保 |
| 蜂蜜 | ウバ少量で後味を締めるとだれにくい |
ベンチマーク早見(M:氷を使う日)
- アイス向け:茶葉1.2倍。ホットより抽出30秒長め
- 牛乳は冷やして後入れ。急冷で香りを逃がさない
- 甘みはシロップ推奨。砂糖は溶け残りやすい
まとめ
ミルクティーの鍵は、ボディ・渋み・香りの役割を分けて考えることでした。
アッサムやケニアで厚みを作り、ウバやキームンで香りを添え、ディンブラやニルギリで日常の飲みやすさを支えます。
比率と時間の基準を持てば再現性が上がり、その日の気分に合わせて微調整する楽しさも広がります。
今日の在庫から一度「基準→微調整」で淹れてみてください。いつもの一杯がやさしく整い、気分もそっと軽くなるはずです。


